山形大学のオープンイノベーション ーなぜ今、オープンイノベーションに力を入れるのか?ー
なぜ今、オープンイノベーションに力を入れるのでしょうか?
国立大学は、2004年に法人化され、自主的・自律的に大学を運営することができる(または、しなければならない)ようになりました。教職員は非公務員になり、企業との産学連携や大学発ベンチャーの設立など、活動の自由度が高まりました。
一方、法人化に伴い、運営費交付金という形で国からの助成を受けながらも、各大学が努力して研究開発資金を獲得することが求められ(運営費交付金は、2004年から10年間、年1%程度減額されてきました)、各大学が積極的に産学連携の創出に取り組むようになりました。
下表は、共同研究費受入額の大学ランキングです。山形大学は地方大学としては共同研究の外部資金は上位に位置しています。
民間企業との共同研究費受入額(令和2年度)
(引用: 文科省HP「大学等における産学連携等実施状況について」)
1位の東京大学は、山形大学の20倍程度の受入額になっていますが、5年前は7倍程度の違いしか有りませんでした。ここ数年、ランキング上位の大学は受入額を増やしてきていますが、山形大学は若干減少してしまっています。
参考:JST発行 産学連携ジャーナル「連載 地方国立大学は産学官連携でどう活路を見いだすか」
共同研究費の額は伸びてきていますが、それでも米国を代表とする外国と比べ、日本は大学の外部資金獲得額が極めて少ない(桁で少ない)のが現状です。それゆえ、大学は日本の産業界におけるイノベーションの重要な役割を担いきれていません。
日本の大学の1件あたりの共同研究平均金額はおよそ240万円程度 です。
皆さんは、この額をどう見ますか?
少ない額ではありませんが、オープンイノベーションという視点からすると、企業と大学の双方に、取り組みの姿勢の変革が求められます。
そこで、文部科学省の「オープンイノベーション機構の整備事業」が始まりました。
文部科学省のホームページによると、オープンイノベーション機構の整備事業についての概要は以下のように書かれています。
企業の事業戦略に深く関わる大型共同研究を推進するため、大学の経営トップによるリーダーシップの下で、プロフェッショナル人材による集中的マネジメント体制を構築し、部局を超えて優れた研究者チームの組織化を図る大学の取組を支援します(支援期間5年間、平成30年度は1大学あたり1.7億円程度)。
これにより、「組織」対「組織」による本格的産学連携の実現を図り、ひいては2025年までに企業から大学等への投資を3倍増とすることを目指すものであります。
(文部科学省ホームページより)これにより、「組織」対「組織」による本格的産学連携の実現を図り、ひいては2025年までに企業から大学等への投資を3倍増とすることを目指すものであります。
従来、企業と大学の連携は「○○先生の研究に興味がある」「◇◇企業の△△研究所の××主任が共同研究をしたい」などという形で連携をしています。これは「個人」対「個人」のつながりであり、産業全体におけるイノベーションマネジメントをする規模ではありません。
「組織」対「組織」に期待するのは、大型の共同研究を創出し、マネジメントし、社会貢献まで結び付けられるマネジメントを行うということです。
これがオープンイノベーション機構の整備事業の根底にあります。
山形大学は2018年度にこのオープンイノベーション機構の整備事業に採択され、その推進組織としてオープンイノベーション推進本部を設立しました。